ケイちゃんマナちゃんPresents ケイコとマナブ.net オリジナル連載小説
「花婿はカウボーイ」 Vol.4
05/24 更新
作:真弓創
イラスト:GM
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に戻ると、玄関でヨシコがマナミを羽交い絞めにしていた。
「ちょうど良かった! お父さん、手伝ってください! マナミが、ムスコーさんと駆け落ちするって!」
「止めないで、お父さん! 私、ムスコーと離れたくないの! 孫が産まれたら見せに来るから、それまで待ってて!」
ムスコーがマナミを愛しているのは、もう伝わっている。そして、マナミもムスコーを愛していることがわかった。だったらもう、自分がどうこう言う話ではない。村越はマナミの頭を撫でて、結婚に賛成であることを伝えたのだった。

して、数ヵ月後。
クリーニングから戻ってきたばかりの礼服に着替え、村越は窓の外を眺めた。
天気予報は外れて、雨だった。ヨシコが村越を鏡の前に立たせ、ネクタイを結びはじめる。

「あっという間に、この日が来ちゃいましたねぇ」
「本当にすぐだった。色々と準備も大変だったんだが……正直、まだ心の準備ができてない。俺、今日は泣いちゃうかもな」
「泣けばいいんですよ。今日のあなたは新婦の父親。泣くのが仕事みたいなもんです」

婚式会場に到着すると、すでに来ていたムスコーの家族が近寄ってきた。皆、整った礼服に身を包んでいる。すでに結納などで顔を合わせているが、カウボーイ趣味なのがムスコーひとりだったことを知ったときは、心から安堵したものだ。やはりスーツは、日本人よりも外国人の体型の方が似合うな。そう思い、気後れしている自分に気づくと、村越は背筋を正した。

「Welcome」
「Thanks」

いあいさつを交わす。ヨシコと通った英会話教室は思わぬところで役立った。ムスコーの父親には英語が通じるのだった。ロシア語もおいおい覚えていかねばならないのだが、この数ヵ月は優先して準備しなければならないことが多すぎた。それは向こうも同じかそれ以上だっただろう。はるか遠方から飛行機でやってきたムスコーの家族たちは、村越がロシアに抱いているイメージそのままに固い表情をしていた。しかしそれも、急な予定で見知らぬ国に来た疲労によるものが大きいのだろう。村越がにこやかに握手を求めると、顔をほころばせて強く握り返してきた。

たがいの親族だけでおこなわれた結婚式は、人数もそれなりにまとまっており、つつがなく進んだ。新郎新婦の希望で日本式の挙式になったこともあり、村越も余分なストレスをためることなく、娘の晴れ姿に素直に感激し、涙することができた。ムスコーも今日ばかりはカウボーイルックではなく、はかま姿だ。外国人にしてはなで肩のせいか、実に似合っているように、村越には思えた。

「ほら泣いた」と、なぜか満足げなヨシコをよそに、数人に分けてタクシーに乗り込み、新郎新婦の友人たちが待つ披露宴会場へ向かう。村越もタクシーを呼びとめたのだが、ヨシコはすっかりムスコーの母親と意気投合しており、どうやら一緒のタクシーに乗っていくようだ。周囲を見回すと、ムスコーの父親がぽつんと立っていた。ここはひとつ、父親同士で国際交流といくか。村越はムスコーの父親を手招きし、タクシーに行き先を告げた。

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内は静かだった。運転手は黙々とハンドルを繰り、ムスコーの父親も街の流れに目をうつろわせていた。村越も切り口上を選んでいるうち、なんとなく億劫になってしまい、無言で料金メーターに目を落としていた。
その中で最初に声を発したのは、ムスコーの父親だった。
「あなたは、物分りの良い方ですね」

の言葉に皮肉めいた響きをとらえ、村越は眉を上げた。
「……ムスコーくんは、娘を幸せにしてくれる青年だと認めています。あなたは違うのですか」
「東洋人との結婚など、今では珍しくありません。国際交流も盛んな時代です。……ですが、それは世間の話です。私たちの一族の話ではありません。あなたたちの一族にとっては、どうなのですか」
村越は答えることなく、窓の外に目を落とした。
雨は朝よりも強く降りつつあった。

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