半ば強引に、夫の反対を押し切って講習に通い始めて3ヶ月。
久しぶりの学校の雰囲気は、想像していたよりもたくさんのものを奈々枝に与えた。
周りのほとんどが10代後半から20代前半の「イマドキ」な女の子たち。
ほんの数年の歳の差が大きなギャップになっていることに気付く日々。
好きな芸能人、流行のメイク、新色のルージュ……ギャップを埋めながら話すそれらの話題は、自分の自由な時間を持てなかった奈々枝にとっては新鮮だった。
「ね、課題やってきてる?」
講師がやってくるのを待つ静かな教室で、となりに座る河合ゆうなが話しかけてきた。
まだ20歳になったばかりの、奈々枝から見ればずいぶんと幼く見える女の子だ。
講習の初日から妙に積極的に話しかけてくるので、いつの間にか教室ではふたりで並んでいることが当たり前になっていた。
「もちろんやってきたわよ。ゆうなはやってきてないの?」
これまでは、若い女の子のなれなれしさにどこか苦手意識を感じていたが、この講習に来ている女の子たちに囲まれることには心地よさを感じていた。
ここには、仲間としていっしょにいられる一体感がある。
講習が3ヶ月目に入り、生徒たちだけで作り上げる結婚式、「模擬ウェディング」へ向けた準備が本格的になってきていた。
その模擬ウェディングの、ブライダルコーディネートコースの代表者に奈々枝が選ばれている。
これまでまとめ役を務めたことなどない奈々枝にとって、胃に穴が空くほどのプレッシャーを感じていた。
そして今日は模擬ウェディングへ向けて、現場で働くブライダルコーディネーターを特別講師に招くことになっている。
奈々枝はかなりの数の質問を用意してきていた。
不安は、全部つぶさないと落ち着かない。
しばらくして、年配の女性講師が女の人をひとり連れて、教室に入ってきた。
「あ!」
「あら」
いつもの講師といっしょに入ってきた女の人を見て、奈々枝は思わず声をあげていた。その声に、女の人が即座に反応する。
教室内の視線が、奈々枝と特別講師の間を交互に行き来した。
「お久しぶりね、三笠……奈々枝さん」
よく通る声で、女の人が言った。
「うわ、すごい。名前、覚えててくれたんですね」
思わず周りのことを忘れて、奈々枝は大きな声を出していた。
「それはもちろん」
4年前と変わらない快活な笑顔で、柏木陽子が言った。
特別講師としてやってきた陽子の授業はスムーズに終わり、奈々枝と陽子はふたりで教室を出た。
「お久しぶりね。こんなところで会うとはおもわなかったわ」
「私もですよ。旦那には講習を受けるの反対されたんですけど、押し切って来てよかった」
「奈々枝さんは、今年でいくつだっけ?」
「27になります」
「そう。それじゃ、私がこの仕事を目指したのと同じ歳ね。がんばってね。とてもやりがいのある仕事だから」
「今はこの先やれるのかどうか、自信ないですけど……」
「大丈夫、あなたならやれるわよ」
奈々枝の心配を知ってか知らずか、陽子は奈々枝にほほえみかけた。