ケイちゃんマナちゃんPresents ケイコとマナブ.net オリジナル連載小説
「夕陽の写真」 Vol.1
08/02 更新
作:鋳一雰士
イラスト:shiz
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霊や怪奇現象の話となると、必ずこの丘が話題にのぼる。
丘の頂上で、見えない誰かに肩を叩かれた話。
帰りの車で友達が増えていた話もある。
写真を撮れば、顔の形をした妖しい光が映りこむそうだ。

だの美しい湖と大きい夕陽があるだけの丘なのに、おびえて誰も近づかない。
丘のふもとの公衆電話には、自殺を思いとどまらせるための相談ダイヤルが張り付けられている。

14年前のその日、この丘を奇妙な少年が訪ねていた。
少年は何かを背負って丘をのぼっていた。
足もとは、はきつぶされたボロボロのスニーカー。
表情は涙でグシャグシャになっていた。

年が背負っているものは、人の形をしている。
それは手足の重みに任せて左右にゆれて、少年の足取りを重くしていた。

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負われているものは小学校高学年といったところ。
白い肌をした、髪の長い女の子だ。
少年の方は中学生くらいだろう。
小柄だし、死体を背負って丘をのぼれるほど、立派な体格ではない。

かし少年は自分の背より高い草をかきわけ、ぬかるむ泥道をふみしめ、丘をのぼる。
どれだけ世の中を恨めば、そんな表情になれるのだろう。
くいしばる歯が、汗と涙と砂に汚されている。

の日の朝。
夕陽が美しいといわれる丘に、ようやく到着したとき。
あと数時間で夕陽に出会えるというのに、少年の妹は帰らぬ人となった。

陽が美しい丘の評判を聞いたとき、同時に
「あそこは“出る”から行かない方がいいよ」
とアドバイスを受けていた。
そもそも妹に残された時間、宣告された余命はとっくに過ぎていた。

れでも少年と妹は丘を目指した。
判断が正しかったのかどうか、今でも分からない。
死んでしまった妹に夕陽を見せることが、何の意味を持つのか、考える余裕はない。
少年は、ただ約束を守りたかった。

さな丘だが、死体を背負ってのぼるなら時間がかかる。
結局、丘の頂上に到着したのは昼過ぎ。
少年は妹の身体を木に預けて、走って丘を下る。
忘れものをしたからだ。
そして再び丘をのぼり、妹のそばに戻り、その横に腰かける。
ひとりで走れば、こんなに早く到着する。

ックパックから、ぬるくなったお茶を取り出した少年は、妹の顔と空を交互に眺めた。
何か話をしたいと思ったが、その望みは叶わない。
自分の空腹加減も分からない。
妹が喜んでくれていることだけを祈る。

のうち陽が沈んできた。
少年は使い捨てカメラを取り出す。

束の写真なのに泣いて写っては申し訳ないと思い、服のソデで顔全体を荒くぬぐう。
目を閉じる小さな身体を肩で抱き、残った手を伸ばしてカメラを構える。
背後には沈む夕陽のオレンジ色。
シャッター音。

のときに撮られた写真が、14年後の現在、ある女性カメラマンを悩ませている。
単なる夕陽と人物の写真が、なぜここまで自分の心に響くのか。
彼女は名を、梅原元美という。

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