ケイちゃんマナちゃんPresents ケイコとマナブ.net オリジナル連載小説
「夕陽の写真」 Vol.2
08/09 更新
作:鋳一雰士
イラスト:shiz
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原元美は、カメラマンとしてまだ日が浅い。
写真スタジオで2年ほど修行し、思い立って独立したのが数ヶ月前。
カメラマンと呼べるのかどうかも、まだあやしい。

日は尾見藤治郎という、オーケストラ指揮者の写真を撮った。
それがフリーになって初めての仕事だった。
尾見は「霊感を持つ指揮者」として業界で有名な人物。
取材もそっちの話題が中心だった。

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ンタビューが終わると、老指揮者は元美を呼んで耳打ちした。
「あなたの魂は、とてもアンバランスだから気をつけて」
いくら霊感がウリの指揮者とはいえ、失礼な人だと思った。
しかし思い当たるフシもある。
あの写真のことだ。

美は小さいころの記憶を持っていなかった。
もっとも古い記憶は病院で目が覚めるところ。
11歳のころだったと教えられている。
そのあとは知らない施設に連れて行かれ、10代のほとんどをそこで過ごした。

時、元美は何の荷物も持っていなかった。
あったものといえば、元美に身寄りがないことを証明する無意味な書類と、夕陽の写真だけだった。

んな元美だったが、不幸を感じていたわけではない。
人を笑わせるのが好きで、集中力もあり、それなりに友人に恵まれてきた。
ときどき恋もした。
上出来な人生とはいえないが、不満が残る事件も起こらなかった。

メラマンを目指したのは、もちろん夕陽の写真がルーツである。
それに元美がここまで不幸もなく日々を送ってこられたのも、この写真のおかげだった。
夕陽の写真を見ていると、不思議とポジティブな気持ちになれた。
安らかで、敏感で、情熱的な自分に変身できた。
元美はこの写真を、かたときも手放したことはない。

かし元美は、この写真がどこの風景を写したものなのか、誰を写したものなのか、全く知らなかった。
写真について勉強していれば、この大切な写真について、いつか知る機会があるだろうと考え、彼女はカメラマンの道に進んだのである。

うやくカメラマンになった元美は、その写真の場所について、あっさりと教えられた。
それは日本でも有数の霊場として知られていた。
事情を知る人によっては、事故が多発するトンネルよりも、イタコが集まる山よりも近づきたくない場所なのだそうだ。

して取材の日にも、老指揮者にも怪談めいたことを言われた。
あの写真は元美に力をくれるけど、よからぬ事情も抱えているのは間違いない。

「やっぱ行くしかないか」
そもそも元美は、いつか写真の場所を訪ねることに決めていた。
早くなるか遅くなるか、それだけの話だ。

分と写真との関係を知ることに、少し怖さも感じていた。
しかし、怪談や心霊が怖いわけじゃなかった。
だって、自分にたくさんのものを与えてくれるこの写真が、何か悪いことにつながっているとは思えない。

指揮者への取材から1週間後。
元美は新品のスニーカーをはいて、丘を目指した。

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