ケイちゃんマナちゃんPresents ケイコとマナブ.net オリジナル連載小説
「夕陽の写真」 Vol.4
08/23 更新
作:鋳一雰士
イラスト:shiz
イメージ

美はあっけなく丘を見つけた。
隠されている場所というわけではなく、一種の観光名所として近所でも有名らしい。
夏の心霊特番を撮影するために、テレビクルーもしょっちゅう訪れるそうだ。

着した時間は午後の3時。
ほんの何時間か待てば、夕陽が現われるだろう。
元美は、あたりの写真でも撮影して時間をつぶすことにした。

方14年前の同じ場所で、少年が妹を生き返らせるための条件を聞いていた。
「……だけど、いいかい?」
条件とは、少年がこの世から消えてしまうことだった。

れは少年の存在が初めから無かったかのように。
人の記憶からも消えてしまい、名前も消えてしまい、写真も消えてしまうということを表していた。
もちろん、生き返った妹も、彼のことを完全に忘れてしまうということだった。

「じゃあ、妹を生き返らせることに、なんの意味があるんだろうね」
顔のない老人は意地悪くささやいた。
だがその意地悪な言葉も半ばで、少年はヒザをついて老人に頼み込んだ。
お願いしますと、何度も何度も繰り返した。
醜いほど必死だった。

の様子を見て、老人はあきれていた。
老人はもちろん人間ではなく、人の魂や心を迷わせて、その迷いを食べて生きている存在だった。
だから、これだけ迷わない人間には興味がない。
だけど老人にとって、全ての約束は「絶対」だった。

「わかったから。顔をお上げなさい」
少年が顔を上げると、すでに老人の姿はなかった。
「きみの願いを叶えてあげよう」
赤い空に、すでに姿のない老人の声が響いた。

の声を聞いた少年は、すぐに妹を確認した。
だが動く気配はない。

イメージ

と自分の指を見ると、砂のようにサラサラと、風にまかれて消えていく最中だった。
あの老人は気味が悪かったけど、少年が今まで出会ってきたどの人間よりも信用できた。
だから、自分の身体が無くなったら妹は生き返るのだろうと信じられた。

きたら、夕陽を見て感動する表情を見届けたかったが、それは無理なのだろう。
最後に肩を叩いてやりたかったが、もう手のひらは消えてしまった。
何か声をかけたかったが、何も思い浮かばなかった。

だ、うまくいったんだと理解して心の底から安心できた。
涙が出そうになったが、その寸前で頭も崩れて無くなった。
妹の前で泣かなくてすんで、よかったと思った。

トッと使い捨てカメラが地面に落ちた。

の14年後。
「わっ、やべっ」
元美は商売道具の高級カメラを落として、あわてて拾いあげた。
レンズに泥が付いていないか確認する。

ろそろ夕陽がやってくる。

レッスンを検索してみよう!

半角スペースを入れてキーワードを追加すると絞り込むことができます。

例)英会話 渋谷
イメージ ケイタイでも配信中〜 続きは来週木曜日!
イメージ