先輩たちがあなたの素朴な疑問に答えます「社会人学生のホンネ」CAFE

今月のテーマ「大学院の授業」

学ぶことで人生変わる?お金はどのくらいかかる?仕事との両立って実際どうなの?どんな人と知り合える?などなど、大学院に通おうと思っている社会人の皆さんはいろんな疑問や不安を抱えているはず。そんなときは、経験者に聞くのがイチバン!そこで社会人学生の先輩たちに素朴な質問を投げかけてみた。先輩たちの生の声を是非参考にしてみよう。

回答してくれる先輩たち

東京理科大学大学院 総合科学技術経営研究科 総合科学技術経営専攻(MOT) 栗山 克(よくす)さん(34歳)日本教育大学院大学 学校教育研究科学校教育専攻 武田保明さん(32歳)一橋大学 国際・公共政策大学院 公共経済プログラム 社会人1年課程 酒井信行さん(26歳)


Q1.大学院の授業ならでは!と思った点は?

酒井さん :
6〜10人の少人数で行うディスカッション形式の授業ですね。政策事例研究という科目は、教授がさまざまな政策課題に関するテーマを与えて、学生は、「政策立案者ならどう考えるか?」という観点から発言するのですが、バックグラウンドによってみんなそれぞれ意見が違います。官公庁出身の方と民間出身、学部卒という違いもあるし、官公庁出身者でも、省庁出身者と地方自治体出身者では視点が違うんですよね。学部卒者も、経済学をベースにしているか、法学をベースにしているかで違いがある。他人の意見を聞くのは重要なことですし、それぞれの意見の違いがおもしろいですね。
栗山さん :
とにかく発言しないと始まらないですね。文系出身者もいれば、理系出身者もいるので、科目ごとに学生の知識レベルは一定ではありません。それが前提になっているので、「考えが足りないかな」と思うようなことでもどんどん聞いてOKという雰囲気ですよ。そこで恥をかくことは大した問題じゃないですし、私もどんどん発言するようにしています。授業には積極的に参加したいので、座席はいつも二、三列目あたりを定位置にしています(笑)
武田さん :
かつての学部時代の授業は、教室の隅に座って話を聞いているだけという感じでしたが、日本教育大学院大学のは正反対で、学生が参加するタイプの授業ですね。前に出て発表もしますし、グループ討議などもよく行います。グループ討議では、「ただ黙っているわけにはいかない」ということはみんなよくわかっているので、発言は積極的だし、仕切り役も自然と決まったりしますね。また、授業が終わった後でその日のテーマについて学生同士で話し合うことも多いですよ。

Q2.大学院の授業を体験してどんな気づきがあった?

栗山さん :
私は理系出身なのですが、サイエンスのアプローチというのは「真理がどこかにある」という考え方なんですよね。ところが、大学院の研究は、答えがないものを探す思考実験。特に経済学の基礎を学んでいてそれを強く感じましたね。経済学の理論はさまざまな見方が並立しており、教授はその中から正解を指し示すのではなく、「キミはどう考えるのか、どの立場を取るのか?」と問いかけてくる。それが戸惑った点でもあり、新鮮な点でもありました。最初は、大学院では「手法」を学ぶイメージだったんですが、今は「考え方」を学ぶところなんだと実感しています。
武田さん :
教授法には正しいやり方が一つだけあるわけではなく、いろいろな方法の中から自分に合ったやり方を選択していく必要があるということを、授業を通して理解しました。私自身は、多くの教授の授業を経験し、さまざまな角度からその教授法を参考にする中で、「生徒みんなが参画できる授業」をやりたいと思うようになりました。

Q3.授業についていけなくなることはある?

武田さん :
次回の授業で何をやるかは毎回指示されるので、予習をしっかりやって、さらに積極的に参加する意識があれば、ついていけないということはないですね。また、私の場合は、同じ科目の昼の授業と夜の授業を両方受けることがあります。テーマは同じでも、学生のメンバーが違うからアプローチの仕方も昼と夜で違ってくる。より、理解が深まるんですよね。
栗山さん :
東京理科大学MOTの場合、技術系の学生のために経済、経営などの基礎を学べる科目がちゃんと用意されています。そこで土台を作りますし、授業自体も知識を問う内容ではないので、理系の人が社会科学系のテーマに、あるいは文系の人が技術系のテーマに対応することも十分可能です。ただし、社会科学系の資料を読み込むのに苦労をすることはありますね。でも文系の方が技術系の資料を理解するほうがより大変みたいですよ。
酒井さん :
英文の資料を読むのはやっぱり大変ですね。苦労しつつもなんとかクリアしています(苦笑)。まわりは語学をきちんとやってきた人が多いので、そうでもないのかもしれませんが。

Q4.印象に残っている授業は?

栗山さん :
大手メーカーで活躍されてきた実務家の教授の授業は、私自身技術者ということもあって、どれもおもしろいですね。ナマの経験談はやはり迫力があります。一方、アカデミック系の教授の授業も、言葉の定義一つ一つにこだわって、とことん論理的に進める点で、今までの自分にない視点を得ることができました。その意味では、どの授業も印象に残っています。
酒井さん :
「法と経済学」などの学際的な科目は、一橋大学国際・公共政策大学院の特色が出ていて興味深いですね。こうした学際的な取り組みに関しては、もっといろいろなことができるのではないかと学生の側からも提案しています。
武田さん :
日本教育大学院大学では、1年目の最初からゼミがあって、やはりゼミが学習全体の1つの核になっていますね。私がとっているのは「学校教育相談」をテーマとしたゼミで、ゼミ生は1年生4人。教科教育や学校行事だけでなく、保護者との接し方や不登校への対応など、学校教育に関するさまざまな課題について問題解決の手法を研究しています。

Q5.期末テストや中間テストはある?

酒井さん :
私が属している公共経済プログラムでは、経済学の基礎(マクロ経済学、ミクロ経済学、計量経済学、公共経済学)をしっかりやる必要があります。これらの科目はとにかく知識を詰め込むのが目的。なので、中間テストや期末テストもありますよ。ちなみに宿題もハードです。こういう勉強は、やはり学部卒の学生のほうが強いですね。私たち社会人学生が教えてもらうこともよくあります。
栗山さん :
基礎系の科目ではテストを行うこともありますが、レポートを課す科目が多いですね。レポートが多い授業は大変なんです。溜め込んでしまうと金曜の夜は寝られません(苦笑)

先輩プロフィール

栗山 克(よくす)さん(34歳)
東京理科大学大学院
総合科学技術経営研究科
総合科学技術経営専攻(MOT)
栗山 克(よくす)さん(34歳)
セントラル硝子(株)
人事部

プロフィール

慶應義塾大学理工学部化学科卒業、同大学大学院理工学研究科化学専攻修了。同大学院修了後、1997年にセントラル硝子に入社。6年半の研究職を経て開発営業職に異動。今年2月に人事部に異動。今年4月から企業派遣で東京理科大学MOTに進学。現在1年目。

大学院に進学した理由

以前から多様なものの見方を身につけるため、MOTに興味があった。ただし、直接的な理由は会社から企業派遣の話があったから。

進学してよかったこと・苦労したこと

授業や教授、同級生との交流を通して期待通りいろいろな視点を持てるようになった。最初はレポート作成の要領がわからず苦労した。

武田保明さん(32歳)
日本教育大学院大学
学校教育研究科学校教育専攻
武田保明さん(32歳)

プロフィール

音楽系の専門学校(4年制)を卒業後、佛教大学社会学部に進学し、中学校の社会科、高校の公民科の教員免許を取得。卒業後は音楽指導者を経て運輸会社に就職。教員を目指すため、この春退職し、日本教育大学院大学へ。

大学院に進学した理由

中学、高校で吹奏楽部の指導に携わるなかで、教員になりたい気持ちが強くなった。知識・指導スキルを強化するため大学院へ。

進学してよかったこと・苦労したこと

よかったのは同じ目的意識を持つ仲間と高めあっていけること。苦労しているのは授業についていくため予習・復習が欠かせないこと。

結城邦博さん(39歳)
一橋大学 国際・公共政策大学院
公共経済プログラム 社会人1年課程
酒井信行さん(26歳)
監査法人勤務(休職中)
公認会計士

プロフィール

慶應義塾大学総合政策学部在学中から公認会計士を目指し、卒業の翌年に2次試験合格。その後監査法人に就職(現在は休職中)。今年4月から一橋大学国際・公共政策大学院公共経済プログラム(社会人1年課程)に進学。

大学院に進学した理由

将来的には公共部門のアドバイザリー業務に携わることが目標。そのために必要な経済に関する知識を強化したかった。

進学してよかったこと・苦労したこと

よかったのは、いい仲間と出会えたこと。ただ、めまぐるしく変化している監査業務の現場から離れている点は不安材料の一つ。