社会人でも大学に入学できる?知っておきたい受験の基礎知識

社会人が学びやすい大学や入試制度はどんなものがあるの?に答えます。

大学といってもさまざまな種類があり、入試方法も多数あります。そこで、社会人になった後に改めて大学で学びたいと思った方向けに、大学や受験内容について解説します。

社会人でも大学に入学できる?知っておきたい受験の基礎知識

「一度あきらめたあこがれの仕事を目指すために、もう一度大学で学び直したい」「高校を出てすぐに就職したけれど、やっぱり大学で勉強してみたい」など、大学での学びに関心をもつ社会人も多いと思います。でも、「社会人が働きながら大学受験に挑戦できるの?」と、不安を感じている人もいるのではないでしょうか。学ぶ意欲がありながらも一歩を踏み出せないという社会人に向けて、社会人でも通いやすい大学や、社会人だからこそ利用できる入試制度など、知っておくべき大学受験や入試対策の基本的な知識をお伝えします。

【社会人でも受験できる大学の種類】

社会人生活を送る今、学生になったときにどんな毎日になるのか、イメージしにくいかもしれません。そこでまず、大学での学びの形態について知っておきましょう。大きく分けて「通学制」と「通信制」の2種類があり、それぞれのポイントを解説します。

■通学制大学

大学のキャンパスに通って学ぶ「通学制大学」。授業を開講する時間帯などによって3つの形態があります。
☆大学昼間部
昼間の時間帯のみに授業を開講している大学昼間部。一般的に「大学での学び」というと、この形態になります。文系・理系を問わず、学べるジャンルの選択肢が多いのが魅力ですが、社会人が働きながら通学するのは難しく、ほとんどの場合、会社を辞めなければなりません。ただ、「大学に入るからには学業に専念したい」「この分野を学んで、志望する業種への転職につなげたい」といった目的と強い意志があるならば、昼間部での学びを検討してみてもいいでしょう。
ちなみに大学昼間部に入学した場合、一緒に学ぶ学生のほとんどは、社会人経験のない一般学生となります。
☆大学夜間部(二部)
夕方から夜にかけての時間帯に開講するのが大学夜間部。昼間部と同等のカリキュラムを学べるので、働きながら大学で学びたい社会人にとって、メリット大といえるでしょう。平日夜間に加えて土曜昼にも科目を開講しているケースもあり(※)、社会人でも無理なく4年間で卒業できるようにカリキュラムが組まれている点もポイントです。

(※)夜間開講と土曜昼開講という組み合せで「フレックス制」(下記参照)という名称を用いている大学もあります
☆昼夜開講制(フレックス制)大学
昼間から夜間の時間帯まで授業を開講し、そのなかから学生はフレキシブルに受講時間割を組むことができるという形態で、「フレックス制」とも呼ばれています。昼間と夜間の科目を組み合わせての履修が可能なので、生活スタイルに合わせて学習計画を立てることができるのが特色。なお、働く社会人向けに、「夜間部」の中に「フレックス制」を組み入れた「夜間主コース」というコースを開設している大学もあります。

■通信制大学

テキストやインターネットによる自宅学習を中心に学ぶ通信制大学。学校教育法で定められている大学なので、正科生として学んで卒業すれば、大学卒の学歴を得ることができます。大学卒の学歴のほか、教員免許状や社会福祉士などの国家資格を目指すことができるのも見逃せないポイント。
通信制大学を卒業するには自宅学習のほか、スクーリング(対面授業)を受講して30単位以上修得する必要があり、働きながらの時間のやりくりはたやすくはありませんが、土日やお盆時期などまとまった休みがとりやすい時期に開催したり、全国各地にスクーリング会場を設置したりしている大学も多数。また、インターネットを活用して自宅でスクーリングが受講できたり、科目修了試験をネット上で受験できる大学も増加中で、社会人が学び続けていける環境が整っています。

通信制大学を探してみる

【社会人の大学受験には、どんな入試形態があるの?】

■通学制大学の場合

●社会人入試(社会人入学試験)
通常の大学入学試験とは別に、社会人を対象にして行う入試のこと。学力試験の負担を減らすなど、社会人が仕事を続けながら挑戦できるような配慮がなされています。
大学・学部・学科によっては入学試験に英語や専門科目などの学力試験を課すケースもありますが、書類審査、小論文、面接(口述試験)などを中心に選抜。社会人入試では学びへの意欲、社会経験、人間性が審査のポイントになることが多く、出願書類の一部である志望理由書と、面接が重視されます。
なお、ほとんどの社会人入試では、「24歳以上で、3年以上の勤務経験がある社会人」など、年齢や勤務年数などの出願条件を設けているので、自分が条件に合っているかどうか、要確認です。
●総合型選抜
大学・学部・学科が求める学生像に合う学生を選抜するための入試​で、以前は「AO入試」と呼ばれていました。一般の受験生を対象とする総合型選抜のほか、社会人を対象に設けている大学も少なくありません。選考方法は大学・学部・学科によってさまざま。一般的なのは書類審査、面接や小論文といった方法ですが、プレゼンテーションやグループディスカッションなどを課す大学もあります。学力試験が課されるケースもありますが、学びへの意欲などに重きを置いて選抜が行われる入試形態であることが特徴。社会人が挑戦する場合は、これまでの経験や実績などもアピールポイントになります。
●編入学試験
編入学とは、主に短大や高等専門学校(高専)を卒業(または卒業見込み)した人が、4年制大学の2年次、または3年次に入学できる制度。これまでに修得した単位などを土台に、通常4年間のところを2年または3年で卒業を目指せるので、限られた時間を有効に活用して大学で学びたいという社会人にとって、見逃せない制度です。大学を中退した人でも、出願に必要な在学年数(修学年数)や修得単位数などの条件を満たしていれば編入学試験にチャレンジできます。​
ただし、出願条件は大学によって異なり、大学を卒業した人を対象にした「学士編入」の制度をもつケース、専門学校卒業生(※)でも出願できるケースもあるなどさまざま。また、同じ大学であっても学部・学科ごとに2年次編入、3年次編入の要件が決められているので注意が必要です。各大学の情報収集の際には、出願条件の詳細までチェックしましょう。​
編入学試験の内容も、大学・学部・学科によりますが、一般的な傾向として、英語や専門科目の学力試験、小論文、面接が課されています。社会人を対象にした編入学試験を実施する大学も増加中で、多くの場合、書類審査や面接、小論文で選考が行われます。
(※)大学に編入学が可能な専門学校卒業生とは:高校を卒業しているなど、大学入学資格があることが前提で、専門学校で修業年限2年以上・総授業総数が1700時間(62単位)以上の課程を修了し、卒業している者。
●一般選抜
学力試験が課される一般選抜。高校生など現役受験生に交じって学力で勝負しなければならないので、社会人にはハードルが高い入試形態といえます。とはいえ、志望する大学・学部に社会人入試の形態が設けられていなかったり、「やりたい仕事に転職するにはどうしてもこの分野の大学での学びが必要」といった場合には、一般選抜にチャレンジする道もあるでしょう。一般選抜では大学が独自に行う入学試験の受験のほか、大学入学共通テスト(センター試験の後継にあたる試験)が課せられる場合もあり、働きながらの受験勉強は楽ではありません。しかし、社会人でもしっかりと対策を立てて受験勉強に取り組めば、一般選抜で合格を目指すことは不可能ではないでしょう。実際、一般選抜で大学に入学し、目指す仕事に転身した事例は数多くあります。

■通信制大学の場合

通信制大学の入試は、学力試験は課されず、ほとんどが書類審査のみ。または書類審査と面接で選考されます。​そのため試験対策は特に必要ありません。入学のタイミングを4月と10月の年2回設けている通信制大学が多く、出願期間も1~5カ月と長めに設定されている​のが一般的なので、働きながらでも余裕をもって、出願書類などの準備を進めていくことができます。

【社会人の大学受験~出願までのダンドリ&チェックポイント~】

■大学受験したい!と思ったら今すぐ行動!

☆学びたいことを明確にし、自分に合った大学をみつける
大学で学ぶ目的は人それぞれ。大卒の学歴を得ることにとどまらず、スキルアップに役立つ専門知識の修得や、資格を取得し、希望の転職、キャリアアップを実現したいと考えている人も多いでしょう。そのためにはまず、自分が学びたい内容を明確につかむことが肝心です。そのうえで情報収集をして、志望校を検討。社会人向けに説明会やオープンキャンパスを実施している大学もあるので、できるだけ参加しておきたいものです。
自分の目的に合った大学・学部・学科をみつけるためにも、履修科目やカリキュラム、教員などのチェックは必須。加えて、キャンパスの場所、学費、授業のレベルが自分に合っているか、卒業後の進路なども要確認事項ですが、志望校選びのチェックポイントとしてはずせないのは、続けやすい学び形態なのかどうかです。仕事を辞めて勉強に専念する決意を固めている場合には、大学昼間部も視野に入りますが、昼間の仕事と両立をはかりながら通学したいなら昼夜開講制(フレックス制)や大学夜間部が考えられます。仕事との両立が不安な場合には通信制大学への進学を検討してみてもいいでしょう。
☆志望する大学の入試形態を調べる
目指したい大学・学部・学科の候補を選び出したら、どのような入試形態なのかを調べます。一般選抜のほかに社会人入試、編入学試験、総合型選抜を実施しているのかどうか、​実施しているとしたら自分は出願条件をクリアしているのかどうか、確認しましょう。この場合、過去の情報はあくまで参考程度にとどめ、必ず最新の情報を確認し、正確な情報をつかんでおくことが重要です。選考方法が変わったり、編入学試験のケースでは年によって実施しないこともあるので、要注意です。

☆無理なく挑戦できる入試形態をみつける
入試形態を調べ、出願条件をクリアしていることがわかったら、入試科目や試験の傾向など試験内容をチェック。過去問題を公表している大学もあるので、しっかり確認して試験の傾向をつかんでおきましょう。働きながら受験勉強、あるいは仕事を辞めて勉強に集中する場合でも、自分が無理なく挑戦できる入試形態なのかどうかを見極めたうえで、受験する大学を決定してください。
入試形態の確認とともに、試験日のチェックも欠かせません。社会人入試の場合は、必ずしも1月~2月に試験が実施されるわけではなく、10月~12月に実施されるところが多いようです。​受験対策を効率よく進めるためにも、入学試験要項でしっかり確認しておきましょう。

■入試の6~8カ月前

☆試験対策をスタート
志望校の入試科目に応じて受験勉強に取り組みます。独学で目指す方法もあるかもしれませんが、限られた時間を有効に使うために受験予備校を利用するのも一案。社会人受験生に対応した講座を設ける予備校は多数あり、英語など学力試験だけではなく、書類審査のポイントになる志望理由書などの書き方や、面接対策の指導まで受けることができます。オンラインで受講できる受験予備校も増えているので、利用を検討してみるといいでしょう。

■入試の2~3カ月前

☆出願
出願に必要な書類と提出期限を確認し、取り寄せる必要があるものは即、手配しましょう。大学受験は一生を左右するイベントですので、出願書類の不備のないよう、早い段階から余裕をもって準備したいものです。出願の方法は大学によって異なりますが、インターネットで出願できる大学が増えています。

【出願の際の主な提出書類】

出願時にはさまざまな書類の提出が求められます。どのような書類が必要になるのか、社会人入試を受験するケースで紹介します。
出願書類は、大学・学部・学科によって異なりますが、主には以下の書類です。

●入学志願書
氏名・住所など基本情報を記入します。各大学で書式を用意しており、学歴や職歴などを記入するスペースが設けられている場合もあります。

●高校の卒業証明書、調査書
大学に進学するためには高校を卒業していることが必要となります。そうした大学入学資格があることを証明する書類として、高校の卒業証明書や調査書の提出が求められます。これらの書類は発行まで1週間程度かかる場合も多いので、早めに手配しておきましょう。
高等学校卒業程度認定試験(または大学入学資格検定)に合格した人の場合は、合格成績証明書を提出します。

●最終学歴の卒業証明書、成績証明書
最終学歴が短大卒、大学卒などの場合は、出身短大・大学で発行してもらいます。書類の作成・発行まで数日かかる場合もあるので、早めに手配を。

●志望理由書
学ぶ意欲と目的を書くもので、社会人入試の選考では最も重要視されるといわれています。盛り込むべきポイントは、なぜその大学で学びたいのか、入学後の抱負、学んだことを卒業後にどう生かしたいのかなど。社会人入試における志望理由書なので、社会経験で感じた問題意識を入れながら、学びたい理由を具体的に書くことが大切です。「800字~1200字」「2500字程度」などという具合に、文字数が指定されている場合も少なくありません。文字数制限があるなかでも簡潔にわかりやすく、説得力のある内容に仕上げましょう。

☆その他の提出書類、
志望する大学・学部・学科によって必要になる書類は履歴書、推薦書、健康診断証明書など。
また、英語の能力を証明する書類の提出を求めるケースも増えています。その場合には、大学が指定する外国語検定試験(実用英語技能検定、TOEIC® SPEAKING TESTなど)の成績を証明する公式スコアや合格証明書の提出が必須になります。

【大学に正規入学する以外に、社会人が大学で学ぶ方法は?】

大学で興味のあるテーマだけを学びたい、学費や時間をかけずに学びたい……そんな社会人が利用できる学び方を紹介します。

■科目等履修生として学ぶ

大学の正規課程に組み込まれている科目を、科目単位で履修できる制度が「科目等履修」。大学卒の学位を目指す正規学生と一緒に学んで試験を受けることができ、単位も修得できます。科目数は1科目から受講できる大学も多く、1科目の開講期間は2学期制なら4カ月程度、4学期制なら2カ月程度といったところが一般的
科目等履修生として学ぶには入学審査を受けなければなりませんが、書類審査のみで試験を行わない大学がほとんどです。
科目等履修生制度を活用して、まずは1科目を受講し、自分に合った大学なのかどうか、通い続けることができるかどうかを判断してから正規入学を目指す方法もあります。科目等履修生として履修した単位は、正規入学した際に卒業に必要な単位に組み込める大学も多いので、詳細は事前に確認しておきましょう。

☆「聴講生」とはどう違う?
大学に正規入学せず、特定科目だけを受講できる制度には、聴講生があります。科目等履修生と同じく、入学審査はありますが、科目等履修生と同様、ほとんどの大学では書類審査のみで試験は行われません。聴講生になれば正規学生と一緒に授業を受けることができますが、試験は課されず、単位を修得することはできません。とはいえ、好きな科目だけピンポイントで受けることができるので、単位修得にこだわらない人は、聴講生制度の利用を検討してみてもいいでしょう。

科目等履修生として学べる大学を探す

■要チェック! 社会人対象の「履修証明プログラム」とは

大学で学びたいと思っているものの、数科目の科目等履修では物足りない、でも正規課程で学ぶのはハードルが高い……そう感じている社会人に着目してほしいのが履修証明プログラムです。
これは、学校教育法で規定された教育プログラム。大学の教育・研究資源を生かしてより積極的な社会貢献を行うために、主に社会人を対象に、学修プログラムを提供することを目的にしているものです。プログラムの修了者には学校教育法に基づく履修証明書が交付されるとともに、厚生労働省が定める「ジョブ・カード」で職業能力証明として「履修証明プログラム修了」を記載することができます。
☆プログラムの内容は?
この履修証明プログラムの特色は、「専門性を高めてキャリアアップしたい」「異業種に転職したい」「地域社会に貢献したい」など、社会人の多様なニーズに直結しているプログラムであること。女性の再就職支援、技術者育成といったものから、農業、地域活性化など、プログラムのテーマや内容はさまざまです。それぞれの専門業界において独自の資格認定を行っているプログラムや、就職サポートを受けられるもの、大学の正規課程に進学した際「単位」として組み込むことができるものもあるので、要注目です。
受講期間はプログラムによりますが、目安として3カ月から1年程度の設定です。
☆入学試験は?
書類審査のみで試験を行わない大学がほとんどです。

☆学費は?
プログラムの内容にもよりますが、全体的にリーズナブルに設定されています。文部科学省より「職業実践力育成プログラム(BP)」として認定されているプログラムもあり、受講料の最大7割が修了後に給付される「専門実践教育訓練給付制度」の指定講座になっているものもあるので、要チェックです。お得に学ぶことができます。

【社会人でも大学入学の道は開かれている】

大学で学びたい社会人のための基礎知識をお伝えしてきました。
社会人にも門が開かれていて、自分に合った方法で大学入学を目指すことができるので、興味のある人は、検討してみてはどうでしょう。

また、大学を卒業している人ならば、大学院で学ぶという選択肢もあるでしょう。社会人を受け入れている大学院は多数あり、働きながら学べるよう、サポート制度も充実しています。​

【社会人の大学入学~素朴なQ&A】

Q 学費が賄えるかどうか、不安です。

A. 学費面の助けになるのが奨学金です。よく知られているのが日本学生支援機構の奨学金ですが、そのほかにも地方公共団体や民間団体が運営するものや、大学や学部が独自に設けている奨学金制度もあります。収入などの条件はありますが、ほとんどの場合、社会人学生でも利用可能。
それぞれで利用要件、返済の有無、返済利息の有無など内容が異なるので、奨学金利用を考えている場合はしっかり調べて、検討しましょう。

奨学金について詳しく知る
https://shingakunet.com/syakaijin/article/hajimeteguide/gakuhi/shogakukin.html
Q 社会人を積極的に受け入れている大学は?

A. 理系、文系問わず、多くの大学で社会人を受け入れています。まずは情報収集から始めてみましょう。
https://shingakunet.com/syakaijin/

最終更新日:2023年6月14日

学問分野変更

  • 通信制