大学・大学院入試 過去問題&受験準備室

大学院の入試問題ってどんな感じなの?という皆さんのために、実際の過去問と解答のポイントを紹介するこのコーナー。人気が高い臨床心理士指定大学院の「専門科目」をフィーチャーしました。臨床心理士指定大学院の場合は、社会人でも専門科目がある一般入試にチャレンジするケースが多数。問題の傾向や解答のポイントを押さえておきましょう!
第2回 今回のテーマ:
臨床心理士指定大学院・専門科目編

論述問題例(名古屋大学大学院教育発達学研究科心理発達科学専攻<2006年度>)

問題

アメリカ精神医学会の「精神疾患の分類と診断の手引きDSM−W」における広汎性発達障害の中の
@自閉性障害
Aレット障害
B小児期崩壊性障害
Cアスペルガー障害
の4つについて、その共通性と相違性について日本語で述べよ

解説 ポイントをチェック

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「問題」の中で、色のついた文字にカーソルをあわせると、ここだけの解説ポイントが読めます。

臨床心理士指定大学院の専門科目は論述問題が中心。ただし、出題形式は、例えば大問1問だけというパターンもあれば、10問出題されてそのうち5問に解答するというパターン(左記の名古屋大学はこのパターン)もあり、大学院によって特徴があるので志望校の過去問題はしっかりチェックしておこう。最近の問題の傾向としては単純な用語解説問題は減少傾向にあり、複数の用語の共通点と相違点を論じさせる上の問題のように、より深い概念理解を求める傾向が強くなっている。
さて、次の解答のポイントについて。論述問題の解答の際に重要になるのは「結論を先に書く」こと(下の解答例も、「共通点に関する結論→その説明」→「相違点に関する結論→その説明」という構成)。また、曖昧な理解で無理に専門用語を使わない、主語・述語の関係を明確にする、接続詞を正しく使うといった基本的事項にも注意し、「論理的」にまとめることを意識しよう。

解答

【解答例】
 広汎性発達障害の各下位分類の共通点しては、対人関係能力の障害・意思伝達能力の障害・情動的な行動日興味の限定の3点が挙げられる。
 対人関係能力の障害は、仲間関係形成の失敗やノンバーバル行動の障害の観察により評価される。意思伝達能力の障害は、会話の開始と継続の維持の障害や独特な言語の使用(例えば、日本語では助詞の使い方、特有な言い回し)などにより評価される。情動的な行動口興味の限定は、限定された興味に対する熱中(例えば、電車の駅名を全部覚える)などにより評価される。
 各下位分類の主な相違点としては、言語獲得口性差・知的水準の3点が挙げられる。
 言語獲得に関しては、自閉性障害では非常に困難であるとされているのに対し、アスペルガー障害では、独特な言語使用を行う者が多いが明らかな言語の遅れは確認されない。レット障害や小児期崩壊性障害では、2歳(小児期崩壊性障害では3歳)以下においては言語が他の字し幼児同様に言語が獲得されるものの、ある時期を期に獲得された言語は消失してしまうとされている。
 また、発達障害の各下位分類には性差が存在するとされている。例えば、レット障害は女児のみに生じるとされており、自閉性障害・小児期崩壊性障害やアスペルガー障害は男児に比較的多いとされている。
 知的水準に関しては、アスペルガー障害は、以前「天才型の自閉症」と称されていたように、知能検査などではディスクレパンシーが多くの症例で示されているものの、全体的な知能指数としては高いことが多い。また、自閉症も必ずしも知的に低いということはない。一方、レット障害・小児期崩壊性障害では、正常な知的発達がある時点で止まった後明らかな知的発達の障害が起こるとされている。

(問題例協力 by 河合塾KALS http://www.kals.jp/kouza/daigakuin/ )