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幼稚園教諭・保育士がめざせる通信制大学ガイド(1/2

幼稚園教諭資格は働きながら取れる?社会人が幼稚園教諭・保育士になるには

子どもが好きで、幼稚園や保育士の先生として転職したいと思っている社会人も少なくないでしょう。
そんな人におすすめしたいのが、通信制大学・短大で学ぶことです。
所定の養成コースを修了すれば幼稚園教諭、保育士の資格の取得も可能です。
そこで、通信制大学・短大で学ぶメリットをはじめ、幼稚園教諭、保育士の資格についての基礎知識、すでにどちらかの資格を取得している人が活用できる制度、就職活動のことなど、解説します。

1-1社会人が働きながら幼稚園教諭・保育士が目指せる通信制大学とは

通信制大学で幼稚園教諭を目指す場合

幼稚園の先生になるには、国家資格である幼稚園教諭免許状の取得が必須。
大学・短大などで所定の課程で学んで単位を修得し、卒業すれば取得できます。
資格試験を受験することなく取ることができる免許状ですが、言い方をかえると、大学・短大などで学ばないと取得できない資格です。
社会人になってからあらためて「幼稚園の先生になりたい」と思ったとき、仕事を辞めて通学制の大学・短大、専門学校に通うとなるとハードルが高いのですが、通信制大学ならば働きながらチャレンジすることが可能になります。

通信制大学で保育士を目指す場合

保育士になるには、保育士の国家資格が必須
大学・短大の所定の課程で学んで単位を修得し、卒業すれば取得できます。
資格取得の方法にはもうひとつ、保育士国家試験を受験して合格するというルートもありますが、受験するための条件(受験資格)が決められており、誰でも受験できる試験ではありません。
受験資格がある場合でも、例年、合格率は20%前後と低く、社会人が働きながら合格を目指すのはたやすいことではないでしょう。
となると、働きながら自分のペースで学び、保育士の資格取得をめざせる通信制で学ぶという選択肢は、社会人にとっては大きなメリットがあるといえます。

通信制で学ぶメリット

幼稚園教諭・保育士どちらを目指す場合にもいえることですが、大学で学ぶメリットの一つは、資格取得のために必要な科目を履修できるだけではありません。
教育学や心理学などの知識を広げたり深めたりできる幅広い科目を履修できることもメリットの一つ。
幼稚園教諭も保育士も、人の乳幼児期という、その後の発達に大きな影響を及ぼす時期に携わり、子どもたちの成長を支える重要な仕事です。
資格取得とともに、幼児教育や保育のスペシャリストとしての専門性に磨きをかけることができるのも魅力です。

幼稚園教諭と保育士の違いとは?

幼稚園教諭と保育士の違いについて、確認しておきましょう。

職種 幼稚園教諭 保育士
必須資格 幼稚園教諭免許状 保育士
管轄省庁 文部科学省 厚生労働省
教育の対象 3歳から小学校に入学するまでの幼児。原則として年齢別に学級編成。 0歳から小学校に入学するまでの乳幼児。一人の保育士が見る乳幼児の数は、子どもの年齢別に、国によって決められている。
働く場所 幼稚園のほか、認定こども園など 保育所のほか、認定こども園、児童養護施設、乳児院、障がい児施設、児童館、医療機関など

幼稚園は、教育基本法で定められている学校です。
幼稚園教諭は学校の先生として、国が示す幼稚園指導要領や各幼稚園の方針に基づいて教育を行います
遊びや運動、音楽などを通じて、子どもの感性や身体能力の成長を支えるほか、健康状態のチェック、しつけなどをするのも仕事です。
また、幼稚園の1日の教育時間は4時間が標準(幼稚園によっては預かり保育も実施)。年間39週以上で、夏休みや春休みなどの長期の休みがあります。

対して、保育所は児童福祉法で定められている児童福祉施設です
保育士は、保護者に代わって子どもの身の回りの世話をし、食事や排泄、着替えなどの生活習慣を身につけさせる、遊びを通して心身の発達の支援をする、集団生活のなかで社会性を養うといった役割を担っています。子育てに不安を感じている保護者をサポートするのも重要な仕事です。
保育所では保育の必要量などに応じて、2つの利用区分があり、「保育短時間」の区分で預かる場合、最長8時間。「保育標準時間」の区分の場合、最長11時間です。ともに延長保育もあります。夏休みや春休みなど長期の休みはありません。

出典:「幼稚園について」.文部科学省. ,(参照2021/12)
「幼稚園指導要領(教育課程の編成、2,3)」.文部科学省. ,(参照2021/12)
「子ども・子育て支援新制度」資料 2枚目「保育の必要性について」. 内閣府. ,(参照2021/12)

実習期間中、仕事との両立はどうしている?

保育士や幼稚園教諭を目指すうえで避けて通れないのが実習です。
通信制で学ぶ場合であっても、実習をクリアしなければ、資格取得に必要な単位は修得できません。

保育士を目指す場合、保育実習は30日以上(10日間以上の実習を3回)。幼稚園教諭も幼稚園での教育実習が4週間程度(4週連続または、2週間程度の実習を2回)。
長期間の実習になるので、有給休暇を活用しても難しい場合があるかもしれません。
実習に入る前の段階で転職する意思を固め、実習の時期にはフルタイムの仕事は辞めて資格取得に専念するという方も多いようです。
実習は現場を体験できる貴重な機会。ベストを尽くすためにも、仕事との調整をどうするのか、しっかり考えておきましょう。

1-2目指せる免許・資格は?

保育士の資格も幼稚園教諭免許状も、未経験でも取得が可能。
通信制大学・短大の幼児教育系の学部・学科、教員養成系の学部・学科などに養成課程が設けられています。

幼稚園教諭免許状

幼稚園教諭の免許状は最終学歴などによって、二種、一種、専修の3つの区分があり、どれも通信制で学ぶことで取得できます。

二種免許状(短大・専門学校卒)
所定の科目を履修して39単位を修得することで、短大や専門学校卒業と同時に取得できます。
通信制短大で2年間学ぶことで取得が可能。
幼稚園教諭として幼稚園で働いている人の約7割は、二種免許状取得者が占めています。
出典:「学校教員基本統計調査・令和元年度」 表番号5「免許状別 職名別 教員構成」. 政府統計の総合窓口.,(参照2021/12)
一種免許状(大学卒)
大学で所定の科目を履修して59単位を修得することで、卒業と同時に取得できます。
通信制大学に1年次入学または編入学して2~4年間学ぶことで取得可能。
二種免許状か、一種免許状なのかで仕事内容には違いはありませんが、私立幼稚園によっては月給など待遇面で差が出るケースもあるといわれています。
また、幼稚園の園長先生になるためには、原則として一種免許状の取得が必要とされるので、将来は園長になって幼稚園の運営に取り組んでみたい人は、大学で学んで一種免許状を取得しておくといいでしょう。
専修免許状(大学院修士修了)
幼稚園教諭免許状一種を取得し、さらに大学院修士課程または専門課程を修了することで取得できます。
通信制大学院で取得可能です。
専修免許状をもって、幼稚園で働く人は多くはありません。ですが、幼児教育の研究者や、大学・短大の教員として幼稚園教諭育成の道に進みたい人は、大学院進学を検討してみてもいいでしょう。

保育士

資格取得の方法は2つあります。
一つは、大学・短大・専門学校などの保育士養成課程で所定の科目を修得し、卒業と同時に取得する方法。
通信制短大の3年制コース通信制大学の2年次編入学で3年間学んで取得するのが一般的なようです。
なかには3年次編入学で2年学んで保育士の資格を取得できる通信制大学もあります。

もう一つ、保育士国家試験を受験して合格するルートがあります。
この試験は、「大学卒か短大卒の学歴があること」など、いくつかある受験資格の一つに該当していれば受験できますが、筆記試験全9科目と実技試験のすべてに合格する必要があり、決して簡単な試験ではありません。
合格を果たすまでに2~3年かかるケースもあるといいます。

1-3 幼稚園教諭・保育士を目指せる通信制大学最新事情

都市部での待機児童問題が社会的にも大きく取り上げられていますが、その要因の一つが保育士の人材不足。待遇や労働環境などが問題とされていますが、保育士を目指している人にとっては、悲観するべき状況が続いていくわけではありません。
国や自治体では改善に向けた取り組みを進めています。
例えば、給与の引き上げ、賃貸住宅の家賃補助、保育士の業務負担を軽減するために保育補助者の雇用を支援する…などです。
保育士の人材確保は、女性が働きながら子育てしやすい環境をつくること、つまりは少子化対策にもつながるものとして、国を挙げての重要施策でもあるので、今後も保育士のニーズは広がっていくでしょう。

また、「幼保一元化」の動きが進んでいることにも注目です。幼稚園と保育所の両方の機能をもつ「認定こども園」は、待機児童問題解消や少子化対策の目的もあって年々、増え続けています。
2011年には全国で762園だったのが、2021年(4月1日時点)には8585園になりました。
そこで必要となっているのが保育士と幼稚園教諭の両方の資格を取得している人材(保育教諭)です。

こうした流れは保育士、幼稚園教諭の養成施設にも波及しており、幼稚園教諭・保育士の同時取得が目指せる大学・短大もいくつもあります
通信制でもダブル資格を目指せる課程をもつ大学・短大は少なくありません。実際に両方を取得する学生も増えています。

保育士・幼稚園教諭のダブル資格取得は、認定こども園に就職するために必要という面もありますが、それだけではありません。
近年の研究成果から、乳幼児期の教育がその後の発達に大きな影響を及ぼすことが明らかになっており、保育士にも教育に関する高度な専門性が求められるようになっているのです。
もちろん、幼稚園教諭にとっても、保育士資格を取得することで仕事の幅や就職・転職の選択肢が広がるというメリットがあります。

ダブル資格取得を目指すとなると、修得が必要な単位数や実習が増えて大変にはなりますが、保育・幼児教育の専門家として長く活躍したいと考えている人は、チャレンジしてみてはどうでしょう。

出典:「保育士確保」. 厚生労働省,(参照2021/12)

1-4 「幼保特例」で保育士資格取得者が幼稚園教諭の資格を取得しやすくなっている

「幼保一元化」が進むなか、注目したいのは「幼保特例」という制度です。
2025年3月までの期限付き制度ですが、すでに保育士を取得している人が幼稚園教諭免許状を、すでに幼稚園教諭免許状を取得している人が保育士の資格を取得しやすくするための特例制度です。
この制度に対応したコースを設けている通信制大学もあり、一部の科目を選択して学ぶ科目等履修生として入学し、最短半年で取得可能です。

出典:「幼稚園教諭免許状を有する者における保育士資格取得特例」.厚生労働省.,(参照2021/12)
「幼稚園教諭の普通免許状に係る所要資格の期限付き特例」文部科学省,(参照2021/12)

「幼保特例」で保育士の資格取得者が幼稚園教諭免許状取得を目指す場合

保育士として3年以上かつ4320時間以上の実務経験がある人は、所定の8単位を修得すれば幼稚園教諭免許状を取得できます。
取得できる免許の種類は、大学卒の人は一種免許状を、短大卒・高卒の人は二種免許状となります。

ちなみに保育士が幼稚園教諭免許状を目指す方法には、3年以上の実務経験を経て、幼稚園教員認定試験に合格し、幼稚園教諭二種免許状を取得するというルートもあります。
それに対し、この特例制度に対応したコースで学ぶ場合には資格認定試験を受ける必要はなく、短期間で幼稚園教諭免許状を得ることができます

「幼保特例」で幼稚園教諭免許状取得者が保育士の資格を目指す場合

幼稚園教諭として3年以上かつ4320時間以上の実務経験がある人は、所定の8単位を修得すれば、保育士国家試験が全科目免除されます。

Column

幼稚園教諭免許状取得者は、小学校教諭の免許状も取りやすい

すでに幼稚園教諭免許状を取得している場合、小学校教諭免許状が取得しやすい制度があることにも着目を。
教育職員免許法で定められている制度で、幼稚園教諭免許状をもち、幼稚園などで3年以上の実務経験がある人は、通信制大学などで所定の単位(13単位以上)を修得することで小学校教諭二種免許状を取得できます。
小学校に教育実習に出向く必要がないのもポイント。
この制度にもとづいたグラムをもつ通信制大学も少なくないので、幼稚園教諭の経験を生かして小学校で教えてみたい人はチャレンジしてみてはどうでしょう。

出典:「幼稚園教諭経験のある皆さんへ 小学校の先生を目指してみませんか?」.東京都教育委員会.,(参照2021/12)

1-5 働きながら幼稚園教諭・保育士になるには

社会人が幼稚園教諭・保育士に転身するには、資格取得を目指して通信制大学・短大などで学ぶことが第一歩となります。
今の仕事を続けながら学べるのが通信制のメリットではありますが、資格取得後の転職を視野に入れながら、自分に合った転身プランを考えましょう。
未経験から目指すのであれば資格取得までに2~4年はかかるので、収入面も考慮しながら、会社を辞めるタイミングや転職活動を始める時期など、要検討事項です。
通信制大学を利用することで実習前や転職前まで現職の仕事を続けることができるため、収入面の不安を小さくすることが可能です。

また、一部の通信制大学では就職相談や求人情報の提供といったサポートを行っていますが、自分自身でも常日頃から情報収集を欠かさないことが大切です。
さまざまな保育所・幼稚園、認定こども園などのホームページや、幼稚園教諭・保育士専門のサイトなどで求人情報や採用審査の内容をチェック。
気になる園があれば見学に行ったり、可能であるならば実習生として現場を経験させてもらう方法もあるでしょう。
また、保育士の場合なら、資格がなくても保育補助としてアルバイトで働けるので、通信制大学で勉強しながら、実践的な保育技能を学ぶこともできます。

実習やアルバイト先で努力が認められ、「資格取得後は正規の職員に」と、声がかかることもあるといいます。

また、幼稚園教諭も保育士も、公立の保育所や幼稚園、認定こども園などに就職する場合、地方公務員となり、各自治体で実施される採用試験に合格することが必須です。
その年に募集が行われるのかどうかや応募条件(年齢制限など)、試験内容については毎年4月ごろに発表されるので、各自治体のホームページで確認してください。どの自治体でも採用人数は少なく、競争率が高くなる可能性大なので、試験に備えて受験対策が必要です。ちなみに東京都の特別区(東京23区)の幼稚園教員採用候補者選考試験の場合、第一次選考は筆記試験と小論文が実施され、第二次選考では実技試験と面接試験が行われます。2020年度の受験者数は378人で、採用者は33人でした。

参考データ 収入の目安

職種 幼稚園教諭 保育士
月額給与 25万3800円 24万9800円
年間賞与 78万5200円 74万7400円
平均年収 383万800円 374万5000円
平均年齢 36.3歳 37.6歳
勤続年数 8.7年 7.7年
1カ月の
平均労働時間
171時間/月 168時間/月
超過労働時間 1時間/月 2時間/月
出典:「令和2年 賃金構造基本統計調査」.厚生労働省.,(参照2021/12)
※幼稚園教諭のデータは、幼稚園に勤務する幼稚園教員と、認定こども園に勤務する保育教諭を対象にした調査結果。
※平均年収は、月額給与(きまって支給する現金給与額)×12カ月+年間賞与その他特別給与額にて算出。

監修:乾喜一郎 リクルート進学総研主任研究員(社会人領域)

最終更新日:2022年1月6日

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