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武蔵野美術大学 造形学部通信教育課程
100号キャンバス2枚に描く、創造する喜び。卒業制作は集大成であり、これからの創作活動のスタート地点でもある。
周囲に刺激され、前に進んでいく2日間のスクーリング
この日、吉祥寺キャンパスには、卒業制作に取り組む絵画コースの学生約65名が全国各地から集まっていた。アトリエごとに5〜6名の学生と指導教員が割り当てられ、各自持ち込んだ制作途中のキャンバスが並ぶ。100号キャンバスが壁を埋め尽くす光景は、どのアトリエを覗いても圧巻であった。
それまで学生たちが受講してきた課題制作と違い、卒業制作のテーマはまったくの「自由」である。卒業制作直前の授業『絵画Z』から徐々に卒業制作の準備を進め、制作ノートを作りながら自分のテーマを決めていく。自分の空間で向き合う初めての大作に、多くの学生は戸惑い、迷い、悩んだことだろう。そんな苦悩や思いを教員にぶつけられる数少ない機会が、このスクーリングである。
卒業制作では2日間×2回のスクーリングが設けられている。学生によって進行に差はあるものの、概ね1回目のスクーリングではエスキースなどを元に教員と相談し、方向性や展開を定めていく。この段階では教員から厳しい意見も飛び出し、ここで大きく方向転換する学生もいるという。2回目となる今回のスクーリングでは、方向性を再確認し、完成に向かって一気に走り抜けるための助言を行なっていく。
「キャンバスが大きくなった分、学生たちは技術的な面や内容の濃度に不安を感じながら制作しています。やはり、そうした部分へのアドバイスがほしいという学生が一番多いのではないでしょうか。私たちもできる限り一人ひとりに時間をかけて、問題点や不安を解決に導く助言をするよう努めています」。(油絵学科 絵画コース・三浦明範教授)
三浦教授をはじめとする指導教員は、キャンバスの前で立ち止まり、「作者」である学生とじっくり対話をしていく。このスクーリングが終われば、学生は完成までひとりで作品と格闘する日々に再び向き合わなければならない。聞きたいことは全部聞き、それに応える教員の言葉をしっかり受け止めようとする学生たちの真剣な表情が印象的であった。
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教員との対話が「描く楽しさ」を呼び覚ます
具体的な技法や構図などの指導ももちろん行なわれるが、スクーリングを通じて教員たちが最大の目標としているのは、それぞれの学生の一番いいところを引き出してあげる、ということだ。
「私が個人的に大切にしているのは、“とにかく楽しめ”ということ。作者自身が楽しんでいない絵を誰が見てくれるでしょうか?自分がおもしろいと思って描いたものはやはり伝わってくるし、それが最大の魅力になるはずなのです。みんな絵が好きでこのムサビ通信に入学したのだから、卒業する時にはもっと絵を描くことが楽しくなっていてほしい。だから卒業制作では、自分が楽しんで描くことのできるテーマを見つけてほしいと思い、指導をしています」。(三浦教授)
テーマ探しは学生にとって最初の高い壁となる。大きなキャンバスいっぱいに一輪の花を描いていた女性は、テーマを探す過程で人物画から大きく方向転換させたという。そのターニングポイントとなったのは、やはりスクーリングだった。
「テーマ選びでは先生に手厳しいダメ出しやご指導をいただきました(笑)。でも、自分なりに悩みながら制作ノートを作るうちに自分という人間が見えてきて、今の方向性のおもしろさに気がつきました。自分が思い込んでいるものとは違う自分を引き出してもらうために、このスクーリングに来ているような気がします。ひとりで制作をしていると、これでいいのだろうかと悩みは尽きないですし、テクニックの部分でわからないこともたくさんあります。そういう疑問に答えてもらえたり、自分では見えなかった改善のポイントを教えてもらえたりできるので、スクーリングはいつも不安を抱えつつ、楽しみでもあるんです」。(Sさん)
スクーリングの後はいつも作業が捗るとSさんはいう。三浦教授との対話の後、再びキャンバスの上を走らせた筆に迷いは感じられなかった。どの学生も、こうして創作への迷いをスクーリングのたびにひとつずつ断ち切り、「これでいいんだ」と自信を強くしていくのだろう。
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生涯にわたる創作の第一歩としての「卒業制作展」
スクーリングでの直接指導や通信授業課題の添削を行なう教員の多くは、現役の作家やデザイナーである。しかしながら、その作風や得意分野、視点、考え方はさまざまだ。時には複数の教員から正反対とも思える意見やアドバイスを受け、迷う学生もいるかもしれない。でも、それこそが正解のない美術を学ぶ醍醐味でもある。ひとつの作品に対して、いろいろな見方や批評があるおもしろさを体感できるのがこのスクーリングであり、最後の講評なのだ。提出された卒業制作の全作品は鷹の台キャンパスに展示され、卒業制作展の前日には会場で講評が行なわれる。絵画コースの卒業生は例年100名前後。複数の教員が1日かけて作品を一つひとつ講評していく。
「講評では自分の作品に対する批評を受け取るだけでなく、ほかの学生の作品を見て、その作品への批評を聞くことも、その後の創作における大事な視点になります。もちろん、講評する教員の間で意見が合わないことだってあるでしょう。それらの意見を聞いて、その先どう進むのか決断するのは学生自身。講評では、そんなおもしろい化学反応も起こり得るのです」。(三浦教授)
現役作家たちの複数の視点から、自分の作品を批評されることは貴重な体験となるだろう。なぜなら、ここを卒業したら作品をつくるのも、その作品を評価するのもすべて自分自身となるからだ。通信教育課程の学生は、社会や家庭など日常生活との両立に苦心しながら、課題制作やこの卒業制作を通して、創造する難しさを“ひとりで”乗り越える訓練をしてきた。同時に、絵を描く楽しさ、表現する喜びをその中で見つけられたことは、卒業制作展の作品群を見れば一目瞭然であり、その熱量は通学課程の卒業制作展にまったく引けを取らない。
卒業制作は、これからはじまる創作活動のスタート地点でもある。卒業後の絵画や表現とのつき合い方は人それぞれとなるだろうが、どんな形であっても「生涯描き続けてほしい」と教員たちは願いながら、学生たちの作品と向き合っている。
「描く楽しさや創造することへの喜びをここで見つけられたのなら、ムサビ通信で学ぶ意味として、これ以上のものはありません」。(三浦教授)
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編集部の視点
実技などの入学試験を設けず、あらゆる人に開かれたムサビの通信教育課程は、「デッサンも油絵も初めて」という入学者が少なくない。しかし、たとえ知識や技術はゼロからのスタートでも、美術はここまで楽しめる。それを卒業制作に向き合う学生たちが体現しているようであった。彼らが卒業制作というひとつの通過点を経て、広大なアートの世界へ踏み出す瞬間に立ち会ったような気がした。
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