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大卒学位を取得するための通信制大学の選び方ガイド

通信制大学はちゃんと学歴になる? 就職に不利にならない? 学校の選び方や学費、出願方法は?・・・「通信制大学」の疑問にお答え!

高卒、専門学校や短大卒、あるいは大学中退などで社会人になった人などが、働きながら大卒の学位を目指せるのが通信制大学。
大卒の学位を取って、キャリアアップに生かしたいという人の学び直しのステップとして、有効な手段です。
その一方で「通信制大学は学歴にならないのでは?」「就職でも不利になるのでは?」など、不安を感じている人もいるかもしれません。
そこで学歴や就職などの不安に対し、解説していきます。併せて通信制大学の選び方のポイント、学費や入学までのダンドリなどもお伝えします。

1通信制大学は「大学卒」の学歴になる?

通信制大学は学歴になる

最初にお伝えしたいのは、通信制大学は学校教育法によって定められているれっきとした大学であるということ。
卒業すれば、もちろん「大学卒」の学歴を得ることができます。
通信制大学の歴史は古く、始まりは1947(昭和22)年にさかのぼります。
学びたいという意志をもちながらも時間の制約や地理的事情などで困難な状況にある人たちに対し、大学教育の機会を広く提供する目的で、制度化されました。
1950年には正規の大学教育課程として文部科学省(当時は文部省)に認可され、1999年には大学院の修士課程で通信制がスタート。大学院博士課程も2004年に開始されました。
通信制大学には、目的に合わせて必要な科目を学ぶ「聴講生」、一部の科目を選択して学ぶ「科目別履修生」といった制度(※大学により、制度の名称が異なっている場合があります)もありますが、大卒の学位(大学卒の学歴)を目指せるのは「正科生」という正規の課程のみですので、要注意です。

出典:文部科学省「大学通信教育制度について」,(2021年12月)

通信制大学を卒業したことは逆にアピールポイントになることも

通信制大学は一般の人に開かれた大学という役割があり、通学制の大学と比べて入学しやすいという特徴があります。
ほとんどの場合、入学審査は書類選考のみで学力試験が行われることはなく、通学制の大学のような入学試験の難易度を示す偏差値も存在しません。
そうしたことから、「通信制大学は学力に関係なく、簡単に入学できる学校」というイメージだけでとらえられるようになり、さらには「大学卒として認めてもらえないから就職に不利」といった誤解が生まれることもあるようです。
しかし、通信制大学は、れっきとした大学です。
入学時の門戸が広く、一つひとつ単位を勝ち取って卒業まで到達していく通信制大学は、むしろ欧米の標準的な大学の姿に近いと言えます。
「大学卒業」を条件にしている求人では、通学制か通信制かが問題になることはなく、「大卒」として採用されるので、自信をもって就職・転職活動に臨んでください。

2就職・転職活動時の履歴書の書き方、面接でのアピールポイント

通信制大学卒業が就職に不利になるといったことはありませんが、通信制大学がどんな大学なのか、人事・採用担当の方には知られていても、一般に広く知られていないという一面があるのも事実。
就職・転職活動では、働きながらどんなことを学び、何を身につけたのか、できるだけ具体的にアピールすることが大切です。主なポイントを解説します。

履歴書には「通信制大学」であることがわかるように書く

通信制大学は学歴になることはわかっていても、「履歴書にどう書いたらいいの?」と思っている人もいるでしょう。
履歴書の書き方は
<××大学〇〇学部△△学科(通信教育課程) 卒業>
<××大学〇〇学部△△学科(通信教育課程) 現在、×年次在学中>
・・・という具合に、通信制大学であることを明記します。
履歴書に「通信制」の言葉を書かなくても問題はない、といった意見もあるようですが、就職活動の際に必要になる成績証明書や卒業見込証明書(または卒業証明書)などには「通信教育課程」「通信教育部」といった言葉が入るので、履歴書にも書いておくほうが望ましいといえます。
企業や採用担当者によっては、履歴書に「通信教育課程」であることが書かれていないと、不信感を抱かれてしまうリスク。そうしたリスクを避けるためにも通信制大学で学んだことを明記し、働きながら学んだ熱意をアピールすることに力を傾けていきたいものです。

資格取得をアピール

社会人が通信制大学で学ぶことのメリットとして見逃せないのは、大卒の学位のほかにも、働きながらさまざまな資格を目指すことができるという点です。
なかには大卒でなければ取得できない国家資格や、国家試験に挑戦するための受験資格が得られる大学もあります。
資格を取得できれば、学んだ成果として就職・転職活動でプラスになることはもちろん、働きながら通信制大学で資格取得を目指した意欲や努力もアピールポイントになるでしょう。

例:通信制大学で目指せる国家資格

卒業と同時に取得可能な資格
教員免許状(小学校教諭、中学校教諭、高等学校教諭、養護教諭、特別支援学校教諭など)、幼稚園教諭、保育士、司書、学芸員、測量士補など
卒業と同時に受験資格が取得可能な資格
社会福祉士、精神保健福祉士、建築士(一級、二級、木造)など

働きながら学んで卒業できたことはセルフマネジメント能力の証明に

通信制大学は自分のペースで学習を進めることができる一方で、自分で学習計画を立て、モチベーションを維持する努力が卒業まで必要です。
実際のところ、通信制大学は4年で卒業できる人の比率が4割ほどです。
そんななかで働きながら学び続け、仕事と両立させながら通信制大学を卒業したことは、大きな価値のあること。
目標達成のために計画を立て、それを管理し、実践するという、高いセルフマネジメント能力の証しになるので、履歴書や面接でぜひ、アピールしていきましょう。

3 大卒学位とは

大学を卒業すると「学士」の学位が得られる

大学を卒業すると、得られる学位は「学士」です。
4年制大学を卒業するには法令で124単位以上が必要とされていますが、大学によってはさらに多くの単位を卒業要件としています。
こうした卒業要件は通信制大学でも同様です。
働きながら通信制大学で学び、124単位以上の修得を目指すのは決してたやすいことではありませんが、大学卒業が条件となっている求人が少なくないこと、大卒でないと受験できない資格があることもあります。
そのため、社会人になってから、大学で学び直して学士を目指す人が少なくありません。
また、大学を中退していて卒業を果たせなかったことに後悔があり、今からでも大学卒業だけは果たしておきたいという理由から通信制大学で学ぶ人もいます。

最終学歴が高校卒業までの人は、初年次入学となりますが、短大・専門学校卒(または短大中退)の場合は編入学という選択肢もあります。
それまでに修得している単位数に応じて1~3年の履修で卒業が可能です。

高卒中退から通信制大学で大卒の学位を取るには

大学に進学するためには高校を卒業していることが必要となります。
この点も通信制大学であっても変わりはありません。高校中退の人は、まずは大学を受験するための条件をクリアする必要があります。

そのステップの一つが、高等学校卒業程度認定試験(高認)。
この試験に合格すると、高校卒業と同等の学力があると認められ、大学・短大・専門学校の受験資格が得られます。
試験は例年8月と11月に実施。試験科目は、国語、地理歴史、公民、数学、理科、外国語6教科の必修8~10科目で、すべてに合格することが必要。
ただし、すでに高校で単位を修得している科目に関しては免除を受けることができるほか、試験で一度合格した科目は累積されます。
16歳以上で大学受験資格がない人であれば誰でも受験可能です。

また、一部の通信制大学では、中学卒業や高校中退など大学入学資格をもたない人を対象にした「特修生制度」を設けている場合もあります。
特修生として所定の単位を修得するなどの条件をクリアし、「高校を卒業した者と同等以上の学力がある」と認定されれば、その通信制大学の正科生1年次に入学でき、学士の学位を目指せる制度です。
制度の内容は大学によって異なり、高等学校卒業程度認定試験に合格していなくても、正科生1年次に入学できる道を開いている大学も少なくありません。
正科生に学籍を変更することで特修生として修得した単位を、卒業に必要な単位として認定する大学もあるので、興味のある人は調べてみましょう。

4 大卒の学位を得るための通信制大学の選び方

学びたい分野やカリキュラムをチェックする

通信制大学で学ぶことで大卒の学位の取得にとどまらず、希望の転職やキャリアアップをかなえたいと考えている人は多いでしょう。
そのためには目的に合う学校・学科を選ぶこと、自分に合った学び方ができる大学を選ぶことが肝心です。
学びたい分野を明確にしたうえで、履修科目や内容をチェックすることが基本です。
また、取得したい資格がある場合には、目指す資格を取得できるカリキュラムをもつ大学なのかどうかが、重要ポイントになります。
特に国家資格では、国が指定する学校・学部・学科で学んでいることが受験資格になっているケースもあるので、学校に直接、確認しておくといいでしょう。
なお、教員免許や保育士、社会福祉士などの資格取得を目標にしている場合、通信制大学の場合でも数週間の現場実習が必須になります。
実習期間中、仕事をどう調整するのかは、大きな問題でしょう。
まとめて有給休暇を取れるのか、それとも思い切って退職をするのか、そうした点も考えたうえで、学校・学科を選ぶことをおすすめします。

スクーリングの内容・時期・頻度・会場

働きながら通信制大学で学び、卒業を目指す社会人とって、重要なチェックポイントになるのがスクーリング授業です。
通信制大学は、スクーリング(対面授業)で30単位以上修得するのが卒業の条件とされているので、どんなに仕事が忙しくてもスケジュールを調整して、出席しなればいけません。
そのためにも学校選びの段階で、スクーリングについて確認しておく必要があります。
まず、授業内容です。貴重な時間をさいて出席するのですから、スクーリングの内容はしっかり調べておきましょう。
大学・学科にもよりますが、グループワークやディスカッションなどを取り入れた授業が行われることが多く、指導教官から直接、話を聞けたり、通信制大学で学ぶ仲間と交流する機会にもなっています。

内容とともに、必ず確認しておきたいのは、時期や頻度、そして会場です。社会人でも参加しやすいよう、平日のほか、土日やまとまった休みを取りやすいお盆の時期などにも開催している大学も少なくありません。
会場に関しても、大学のキャンパスのほか、全国各地にスクーリング会場を設けるなど、社会人にも便利で学びやすい環境を整えている大学もあるので、しっかり情報収集しましょう。
近年はICT(情報通信技術)の活用が進み、インターネットを利用して自宅でスクーリングが受けられる大学や、通常は試験会場で受験する必要がある科目修了試験をネット上で受験できる大学が増えています。
以前より検討されていたICTの活用が新型コロナウイルスの感染拡大防止の対応で加速。
この傾向は今後も続いていくでしょうから、インターネットをどのように活用しているかも、欠かせないチェックポイントです。

5 通信制大学の学費と奨学金

通信制大学の学費

必要な費用は大学や履修する科目によって異なりますが、初年度納入金の相場は10万円台~30万円台といったところです。
大学によってはスクーリングや科目修了試験の費用を別途徴収するところもあるので、事前に調べておきましょう。

なお、学費というと年額固定のイメージがありますが、最近は1単位の金額を設定し、履修する単位数に応じた金額を納める「単位制学費」を導入している大学もあります。
この制度がある大学なら、仕事の状況に合わせて長期的に学びたい場合にも、余分なコストをかけることなく調整できるというメリットがあります。

通信制大学の奨学金

通信制大学の場合、日本学生支援機構の奨学金が利用できるのは、夏季・冬季スクーリングや通年スクーリングを受ける場合に限られるので注意が必要です。
独自に貸与型・給付型の奨学金制度を設けている大学もあります。

6 通信制大学出願までのダンドリ

高校卒業、専門学校中退の人は初年次入学となりますが、短大・専門学校卒業や短大・大学中退の人は編入学が可能です(在籍時の修得単位数次第では編入学不可)。
編入学する場合には、学歴や修得単位などによって、編入学する年次が変わります。
過去の単位の扱いは自分だけでは判断が難しいこともあるので、志望校のパンフレットなどで詳細な条件を確認し、不明な点は大学に問い合わせるといいでしょう。
そのうえで初年次入学か編入学か、編入学の場合は何年次編入学かを決定します。

通信制大学は入学のタイミングを4月と10月の年2回設けているところが多く、出願期間も1~5カ月と長めに設定されているのが一般的。
入学時期ごとに複数回の出願期間を設けている大学もあります。
また、インターネット出願できる大学も増えており、その場合、資料や志願票は郵送で取り寄せる必要がなく、手軽にダウンロード可能。

また、通信制大学の入試はほとんどが書類選考のみなので、試験対策は特に必要ありません。
そのため、志望校やコースさえ決まればすぐにアクションが起こせます。

資料を確認して出願書類をそろえたら、「善は急げ」で最も早い入学時期に合わせて出願するのがいいでしょう。
なお、多くの通信制大学では、入学月の直前、あるいは少し過ぎた時期でも受け付けてもらえます。
もちろん、出願期間中の早い時期に出願すれば勉強期間をしっかり確保できるので、それに越したことはないのですが、「もう3月(9月)も下旬だから・・・」とあきらめる必要はありません。

7 通信制大学出願の際の主な提出書類

大学・短大の卒業(見込)証明書、成績証明書

大学・短大卒の場合に提出します。
いずれも出身大学・短大で発行してもらいます。
書類の作成・発行に数日を要する場合もあるので早めに手配しておくことが大切です。

編入学資格証明書

専門学校卒の場合は、出身校に発行してもらった編入学資格証明書が必要。
さらに成績証明書のほか高校の卒業証明書も求められます。

高校の卒業証明書、調査書

高校卒が最終学歴の場合に提出する書類です。
調査書は発行までに1週間程度かかる場合も多いので、早めに手配しておきましょう。
なお、高等学校卒業程度認定試験に合格した人の場合は、合格証明書を提出します。

その他の提出書類

そのほかに必要な書類は、志願票、健康診断書など。
学歴や修得済みの単位、志望するコースなどによってさらに必要になる証明書もあるので注意しましょう。

監修:乾喜一郎  リクルート進学総研主任研究員(社会人領域)

最終更新日:2022年1月6日

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