情報セキュリティ大学院大学

情報セキュリティへの挑戦が、人生を変えた。 - Alumni Interview 卒業生インタビュー

01 萩谷 文 氏 / 株式会社JR東日本情報システム 「重要度が増すセキュリティを学び自身の価値を高めたい」

キャリアアップを目指して社内留学制度に応募

入学前は社内OAシステムの運用を担当していました。社内のネットワーク環境が充実していくに伴って、OAシステムに求められる機能も、従業員に求められるスキルも高度になっていきます。管理職向けに勉強会などを主催するようになると、経験で対処するだけでは心許ないと感じることも多くなりました。特に、セキュリティは、技術面に加え従業員の意識改革も必要です。もっと体系的に理解したい、さらに、将来のために自分の価値を高めていきたいと考えて社内留学制度に応募し、IISECに留学することができました。

萩谷 文 氏
萩谷 文 氏

マネジメントも技術も学び幅広い人脈を得た

私が研究分野として選んだのは「マネジメント系」です。システムを使う「人」を軸においてセキュリティにアプローチしていきたいと考えました。一方で、セキュリティ分野では技術も含めた総合的な知識をベースとした判断が求められるため、IISECでは自分の研究領域とは異なる分野を学ぶ機会が積極的に与えられます。私は研究室とは別に「ネットワーク系」を学ぶグループに所属し、実践的な技術を習得しました。文系の私にとって高いハードルでしたが、一緒に研鑽した仲間から多くの刺激を受けることができました。さらに、在学中に得たセキュリティの最前線で活躍する方々とのつながりは、大きな財産になったと思います。自分の専門分野を深めるだけでなく、セキュリティを多角的に学べるところがIISECの良さだと実感できました。

セキュリティ専門部署に異動 JR東日本グループ全体のセキュリティを担当

修了後はセキュリティ対策の専門部署に異動し、現在はJR東日本グループ全体のセキュリティを担う仕事を任せられるようになりました。私が考える理想的なセキュリティ対策は、一人ひとりが自発的にセキュリティ行動をとれるようになること。世に良い技術やサービスの用意は多くありますが、ユーザーに浸透しなければ意味がありません。組織の一員として、従業員への効果的なアプローチを推進していきたいと思っています。

萩谷文 - My Career Step

02 朝長 秀誠 氏 / 一般社団法人JPCERTコーディネーションセンター 「より多くの企業や人をセキュリティ・インシデントから守りたい」

まるで意思があるかのように振る舞うコンピュータウイルスに興味

大学では情報工学を学び、人工知能やエージェントなどの研究をしていました。卒業後に大学院への進学を検討していた頃に興味を持ったのが、コンピュータウイルスです。あたかも自分の意思があるかのように振る舞うコンピュータウイルスを調べていく中で、情報セキュリティという分野の幅広さに気付き、IISECでセキュリティを学ぼうと決心しました。

朝長 秀誠 氏
朝長 秀誠 氏

日本を代表するIT企業の方々と一緒に学ぶという価値

IISECでは日本を代表する企業の方々と一緒にセキュリティを学び、研究することになります。学部を卒業したばかりの自分がこの環境で学べたことは、とても大きな経験になりました。特に、定期的に研究過程を発表しディスカッションする「情報セキュリティ輪講」では、自分にはすべてが足りていないと感じるばかりでしたが、何とかこのレベルまで自分を高めたいというモチベーションを持つことにつながり、IISECでの2年間で大きく成長できたという実感があります。IISECの良さの一つは、卒業後もセキュリティの最前線で活躍する方々と深いつながりが得られることです。現在の仕事でもIISECで得た人脈はとても心強いものになっています。

セキュリティのサポートを一人でも多くの人に届ける

修了後はインターネットセキュリティシステムズ(後にIBMに吸収合併)に就職し、ネットワークの監視業務を5年ほど担当しました。ネットワーク監視は、ネットワークに流れる情報の怪しい振る舞いをキャッチするまでが主な仕事です。その先で何が起きたのか、そのセキュリティ・インシデントに企業はどのような対処をするのかまで関わりたいと思うようになり、JPCERTに転職しました。さまざまなセキュリティのサポートをしているJPCERTで、より多くの企業や人を手助けできる仕事に携わることができ、とてもやりがいを感じています。

朝長秀誠 - My Career Step

03 唐沢 勇輔 氏 / Japan Digital Design株式会社 「ますます重要度が増していくセキュリティを仕事にする楽しさ」

自分の価値を高めるためにセキュリティを学ぶ

IISECへの入学前は、コンシューマー向けセキュリティソフトウェアの開発ディレクターをしていました。仕事で得た断片的な知識だけでなく、セキュリティを体系的に学ぶことの必要性をいつも感じていました。法学部出身だったので、その思いはなおさらです。独学や通信教育では忙しさに流されそうだったので、仕事と両立しつつ学びにも注力する環境を作れそうなIISECを選びました。学費はかかりますが、ICTの発達でますます重要度が増していくと思われるセキュリティを学ぶことは、自分への投資としても十分価値があると思いました。

唐沢 勇輔 氏
唐沢 勇輔 氏

進化を続けるセキュリティに対応できる力を得る

セキュリティの体系的な知識を身につけたいと考えていたので、セキュリティマネジメントから暗号理論まで幅広く受講しました。実習系の科目では、擬似的に構築したネットワークでセキュリティホールを探すといった演習もあり、とても興味深いものでした。セキュリティは現在進行形で動いており、自身の知識もアップデートし続ける必要があります。IISECで学んだことにより、知識をアップデートし続けるためのベースを身につけることができました。また、セキュリティに関わる情報の中にはネットで検索できないようなものもあります。そういった内容について聞きたいと思ったときに、この分野の最先端で活躍されているIISECで一緒に学んだ方々に聞けるのはとても助かっています。こうした方々と深いつながりを得られたことは、何物にも代えがたい大きな価値だと思います。

興味の尽きないセキュリティの分野で新しいチャレンジを続ける

修了後しばらくしてから、キャリアをよりセキュリティに寄せたいと考え、MUFGグループのデジタル戦略子会社であるJapan Digital Designに移りました。セキュリティは、常に変化する攻撃者に対してどう対抗していくかを考え、ビジネスを安全に推進できるように実践していくことです。この刺激的な仕事を楽しみながら、とても充実した日々を送っています。

唐沢勇輔 - My Career Step

04 橋本 正樹 氏 / 情報セキュリティ大学院大学 情報セキュリティ研究科准教授 「デザインベンチャーから情報セキュリティ研究者の道へ」

会社を仲間に託し研究者への一歩を踏み出す

大学在学中にWebサイトや商業製品、店舗の内装等を対象とするデザイン会社を友人たちと起業し、インターネット普及の波に乗って情報システムの運用・管理にも仕事の幅を広げていきました。学部での専攻は文化人類学でしたが、仕事のために独学でセキュリティを勉強していく中で、次第にその魅力に強く惹かれるようになり、それはやがて、「まだ誰も知らないことを探求する研究者になりたい」という思いへとつながっていきました。事業がそれなりに軌道に乗り始めた時期に会社を仲間に託し、研究者を志してIISECに入学したのは、27歳の時です。

橋本 正樹 氏
橋本 正樹 氏

OSのアクセス制御の研究で博士号(Ph.D.)を取得

情報セキュリティは、様々な要素技術に加え、法制度や倫理、情報を扱う人間と組織のマネジメント等が融合している学問分野です。IISECはそれらの基礎を広く体系的に学ぶことができるのが特徴ですが、私は技術系の科目ばかりを選択し、学習していました。今にして思うと少しもったいないことをしたと思います。在学中に研究テーマとして取り組んだのは、オペレーティングシステムのアクセス制御や侵入検知・防御に関する研究です。元々興味のあった分野の研究で、博士号(Ph.D.)を取得することができました。

情報セキュリティの最前線で活躍する修了生たちのネットワーク

情報セキュリティは、文系・理系の枠に囚われない、様々な研究課題が存在する学問分野です。IISECは、日本でいち早く情報セキュリティ分野の教育・研究に取り組み、広くその成果を積み上げてきた組織だと思います。その歴史の上で、多くの修了生が今まさに最前線で活躍しており、従来組織内に閉じがちなデリケートな問題も同窓生として情報交換できるコミュニティがあることは、研究やビジネスシーンでとても大きな力になるはずです。私は、健全な情報社会の発展に資する実践的な研究と、それをベースとする人材育成に、引き続き貢献していきたいと考えています。

橋本正樹 - My Career Step

05 羽田 大樹 氏 / NTTセキュリティ・ジャパン株式会社 「セキュリティのPh.D.取得で大きく飛躍したキャリア」

セキュリティの面白さに惹かれ大学院で学ぶ機会を得た

サーバーの脆弱性診断の仕事を担当するようになり、セキュリティの面白さに惹かれるようになりました。大学・大学院では数学の暗号理論を研究していましたが、セキュリティはより実践に近く、数学とは違った魅力があります。見よう見まねで取り組むだけでなく、体系的に学んでみたいと思い始めていた頃に、IISECへの国内留学を勧められたのは幸運だったと思います。

羽田 大樹 氏
羽田 大樹 氏

とんでもないレベルの技術を実際に研究している人が目の前にいる

研究テーマには「マルウェアの解析」を選びましたが、まだ研究を始めて間もない1年次の時から、NTT研究所の方々とのディスカッションの機会や、マルウェアの学会に参加する機会を与えてもらえたことは、とても貴重な体験でした。当時の自分のレベルでは、遠い世界の話のようにさえ思えた高度なテクノロジーについて、日本を代表するセキュリティの専門家がディスカッションしている姿を目の当たりにして、いつかは自分もあの輪の中に入りたいと強く思ったことが、博士後期課程へと研究を進める大きなモチベーションになったと思います。

アカデミックとビジネスを繋げる人材になりたい

博士前期(修士)課程修了後は、研究の成果をさまざまに役立てて仕事をしていましたが、将来のキャリアパスを考える中で、アカデミックとビジネスの橋渡しができる人材になりたいと思うようになっていきました。そのためにも博士後期課程で研究を続けたいという夢を描いていた時に、会社から「博士号(Ph.D.)を取ってこい」とチャンスを再びもらえたことは、幸運という以外言葉が見当たりません。

博士号(Ph.D.)取得後は、自分が想像した以上にアカデミックな人脈と世界が大きく広がりました。IISECでセキュリティの奥深さを知り、たくさんの刺激を得る機会を与えてもらったことが、私の人生を大きく変えたと思います。

羽田大樹 - My Career Step

06 若江 雅子 氏 / 読売新聞東京本社 「基礎から高度な技術まで学べるカリキュラム 文系の人にこそ学んでほしい」

IT社会を、正しく理解するために入学

文系出身でデジタル機器にすら疎かった私が、なぜかIT担当として記事を書くようになってから10年たった2017年。社内の留学制度を利用してIISECに入学しました。ITを自分の専門分野と定めて本腰を入れて取り組んでいくためには、基本知識を身につける必要があると考えたためです。また、大規模なサイバー攻撃が社会問題になるなど、セキュリティの重要性がますます高まっていたことも、入学を決断した背景にあります。さまざまな技術・分野が融合したセキュリティという学問の性質上、IISECのカリキュラム体系は、ネットワークやデバイス、暗号など様々な分野を「基礎のキ」から学べ、その点も私にとってとても大きな魅力でした。

若江 雅子 氏
若江 雅子 氏

学ぶことを楽しんだ大学院での日々

とにかく学ぶものすべてが新鮮でとても充実した大学院生活でした。日頃考えていることとまったく違うものを勉強するのは本当に楽しいものです。頭が再起動するような感覚です。修了後に「膨張するGAFAとの闘い」という本を出しましたが、その分析にもIISECでの学びは生きています。今後も、技術に詳しくない人に向けて、技術者の視点を通訳的に伝えられるように、大学院での経験を生かしたいと思います。

学び直しでこれまでの自分をリセット

IISECで学んだことで、これまでに蓄積してきた仕事上のノウハウや固定観念を一度リセットすることができ、キャリアにとっても、人生にとってもたいへん意味がある時間だったと思います。会う人ごとに、学び直すことの素晴らしさを伝えまくっているほどです。ITはこれからもさらに私たちの生活に入り込んでくるでしょう。その仕組みがある程度わかっていないと、何が正しいのかという判断もできなくなってしまいます。私たちはもはや技術に無縁ではいられません。IISECは、文系の人にこそ学んでもらいたい大学院だと私は思います。

若江雅子 - My Career Step